静岡県の沿岸部には、公園や漁港のそばなどに津波避難タワーが設置されています。
ただ、静岡県の公式ページを読むと、このタワーに逃げるべき場面と、逃げてはいけない場面があることが書かれています。「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」に伴う避難情報が発令されたときは、避難先が別になります。
この記事では、静岡県危機管理部のページに書かれている内容をもとに、津波避難タワー・津波避難ビルがどういう施設なのか、どんなときに使うのか、使わないのはどんなときかを整理しました。
臨時情報(巨大地震警戒)に伴う避難情報が出たときの避難先は、タワーでもビルでもない

いちばん先に押さえておきたいのが、この一文です。静岡県のページに、こう書かれています。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」に伴う避難情報が発令された時に避難する場所は、これらの津波避難ビルや津波避難タワーではありません。この場合の事前避難場所は、津波浸水想定区域の外にある親戚・知人宅または指定避難所となります。
整理すると、こうなります。
| 場面 | 逃げる先 |
|---|---|
| 地震が発生し、津波のおそれがあるとき | 近くの高台、または津波避難タワー・津波避難ビル |
| 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)に伴う避難情報が出たとき | 津波浸水想定区域の外にある親戚・知人宅、または指定避難所 |
タワーやビルは、津波から緊急に避難するための施設です。県は、大津波警報や津波警報の解除までに1日以上継続することを想定し、滞在機能の充実が必要だとしています。
津波は「人が全速力で走る程度」の速さで来る
なぜタワーが必要なのか。静岡県のページには、その前提が書かれています。
東海地震や南海トラフ巨大地震の場合、津波の第1波が沿岸に襲来するのは早いところでは地震発生から数分程度と予想されています。しかも、陸上でのスピードは人間が全速力で走る程度と言われています。
そのうえで、こう続きます。
走って逃げられる人ばかりではありません。予想される津波浸水想定区域の外までおおむね200m以上離れた範囲は、区域から脱するのに徒歩でも高齢者などは数分以上かかりますから、避難の困難な地域と言わざるを得ません。
予想される津波浸水想定区域の外までおおむね200m以上離れた範囲について、県は「避難の困難な地域」と説明しています。そうした地域で緊急に避難するための施設として、津波避難ビルや津波避難タワーが確保されています。
津波避難ビルは「どのビルでもいい」わけではない
津波避難ビルには、選定の基準があります。静岡県のページに書かれている条件は次の2つです。
- 鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の3階建て以上の耐震性のある建築物(予想浸水高が低ければ2階建てでも可)
- 日頃から鍵がかかっていない、常に警備員などがいる、屋上に通じる外階段があるなど、緊急時に利用できること
建物の構造だけでなく、緊急時に利用できることも選定の条件になっています。
受け入れ人数の考え方も示されています。
ビルから概ね半径200mの範囲を避難対象エリアとし、1人当たり概ね1平方メートルとして避難可能人数を算定します。
避難可能人数は、1人あたり概ね1平方メートルとして算定されています。
沿岸部の住宅地が浸水想定区域になっている市町では、対象エリアの住民数に見合う面積を確保するため、公的な建物だけでなく民間ビルの所有者とも協定を交わしている、とも書かれています。そのためビルによって使える範囲が違い、屋上やベランダなどに限っているところもあります。
タワーは港や公園に多い。普段は陸橋のものもある

津波避難タワーについては、静岡県のページにこう説明されています。
津波から避難することが困難な区域内で、近くに利用できる津波避難ビルがない地域に、津波から緊急に避難することができるように設置されている鉄骨や鉄筋コンクリート作りのタワーです。
津波避難タワーは、港や海岸付近の公園などに設置されているものが多くありますが、場所によっては道路上に設置し普段は陸橋として利用しているところもあります。
道路上に設置され、普段は陸橋として利用されている津波避難タワーもあるということです。
タワーとビルのほかにも、沿岸部に小高い丘を築いたり、山に駆け上るための避難路や避難階段を整備している市町もあると書かれています。
避難が必要な住民の約98%が避難可能と想定。ただし施設の設備は最小限

整備の状況について、静岡県は次のように書いています。
令和4年度末時点で、県内では想定津波に対して避難が必要な住民のうち、約98%の方が津波浸水想定区域外または津波避難施設に避難することが可能と想定されています
ここまでは整備が進んだという話ですが、同じページはそのすぐ後にこう続けます。
現状ではその大半が、階段や手すり等の避難においての最小限の設備だけが具備される避難施設となっています。
そして、滞在時間の想定が示されます。
避難の契機となる大津波警報や津波警報がひとたび発表されると、その解除までに1日以上継続することが想定されるため、その間、避難者が健康を維持できるよう、避難時の雨風や直射日光、トイレ等の対策が必要不可欠となります。
警報の解除まで1日以上継続することが想定される一方、県は、大半が階段や手すり等の避難における最小限の設備だけを備えた避難施設だとし、避難時の雨風や直射日光、トイレ等への対策が必要だとしています。
県はこの状況を受けて、津波避難施設の管理者向けに、滞在機能(防雨・防風・日よけ・トイレ等)を高めるための取組提案集を令和6年3月に作成したと案内しています。
近くの津波避難施設について、設備や利用できる範囲を事前に確認しておくことが大切です。
「うちは鉄筋3階建てだから」は間違い、と県は書いている
静岡県のページには、避難しない理由としてよく挙がる考えを、名指しで否定する記述があります。
地震が発生し津波のおそれがある場合には、「わが家は鉄筋コンクリート3階建てだから」とか「勤務所の建物が避難ビルに匹敵するから」といって、避難しないのは間違いです。
理由も書かれています。
津波の恐ろしさは水の力だけではありません。漁船が打ち上げられてくるかもしれませんし、引き波で陸上のものがことごとく流され、それが建物を破壊します。
建物の構造だけを理由に避難せず、指定された避難施設へ緊急に避難できるよう準備しておくことが必要だと県は説明しています。
いまできること
静岡県の地震・津波対策アクションプログラム2023のページには、県民向けに「自助」の取組として2つが挙げられています。
「わたしの避難計画」を作る
県は「積極的に『わたしの避難計画』を作成し、御自宅付近の災害リスクや避難先を確認しましょう」と案内しています。県は、ウェブサイト上でも「わたしの避難計画」を作成できると案内しています。
備蓄は1週間分以上
もうひとつが備蓄です。県のページにはこう書かれています。
災害直後の物資不足に備え、日頃から食料や飲料水、携帯トイレなどの物資を、1週間分以上備蓄しておくように心掛けましょう。
県は1週間分以上の備蓄を呼びかけ、食料や飲料水に加えて携帯トイレも挙げています。
アクションプログラム2023は令和5年度から令和14年度までの10年計画で、151のアクションが盛り込まれています。そのうち令和7年度までの3年間を、想定犠牲者の9割減災を目指して集中的に取り組む期間としています。
よくある質問(FAQ)
Q. 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)に伴う避難情報が出たら、津波避難タワーへ行けばいいですか?
A. 県は、その場合の事前避難場所を津波避難ビルや津波避難タワーとはしていません。静岡県のページには「『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)』に伴う避難情報が発令された時に避難する場所は、これらの津波避難ビルや津波避難タワーではありません」と書かれています。事前避難場所は、津波浸水想定区域の外にある親戚・知人宅または指定避難所とされています。
Q. 津波避難ビルはどんな建物ですか?
A. 鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の3階建て以上で耐震性のある建築物(予想浸水高が低ければ2階建てでも可)のうち、日頃から鍵がかかっていない、常に警備員などがいる、屋上に通じる外階段があるなど、緊急時に利用できるものが選定されています。
Q. 何人くらい入れる計算ですか?
A. 静岡県のページには「ビルから概ね半径200mの範囲を避難対象エリアとし、1人当たり概ね1平方メートルとして避難可能人数を算定します」と書かれています。
Q. 避難ビルなら建物のどこへ入ってもいいですか?
A. 使用範囲は建物によって異なり、屋上やベランダなどに限っているところもあると案内されています。
Q. タワーにトイレはありますか?
A. 施設によります。静岡県は「現状ではその大半が、階段や手すり等の避難においての最小限の設備だけが具備される避難施設となっています」と書いており、滞在機能の向上を進めている段階です。
Q. どれくらいの時間、そこにいることになりますか?
A. 静岡県は、大津波警報や津波警報が発表されると「その解除までに1日以上継続することが想定される」としています。
Q. 自宅が鉄筋コンクリートの3階建てなら、避難しなくていいですか?
A. 静岡県のページには、そうした理由で「避難しないのは間違いです」と明記されています。
まとめ
- 津波避難タワー・津波避難ビルは、地震が発生し津波のおそれがある場合の緊急避難先。南海トラフ地震臨時情報に伴う避難情報が出たときの事前避難場所は、浸水想定区域の外にある親戚・知人宅または指定避難所
- 津波の第1波は早いところで地震発生から数分。陸上でのスピードは人が全速力で走る程度
- 津波避難ビルはRC・SRC造の3階建て以上(予想浸水高が低ければ2階建ても可)で、鍵がかかっていない・警備員がいる・外階段があるなど緊急時に使えることが条件
- 受け入れ人数は1人あたり概ね1平方メートルで算定。使える範囲は建物ごとに違い、屋上やベランダに限る例もある
- 令和4年度末時点で、避難が必要な住民のうち約98%が津波浸水想定区域外または津波避難施設に避難可能と想定。ただし大半は階段や手すり等の最小限の設備
- 大津波警報や津波警報は、解除までに1日以上継続することが想定されている。近くの津波避難施設の設備や利用できる範囲を事前に確認しておく
- 備蓄は1週間分以上。食料・飲料水に加えて携帯トイレも挙げられている
※この記事は2026年9月時点で、静岡県公式ホームページ(危機管理部危機情報課・危機政策課)に掲載されていた内容をもとにしています。最寄りの津波避難施設の場所や使用範囲はお住まいの市町にご確認ください。
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写真:Wikimedia Commons(Halowand/CC BY-SA 4.0、Sato S/CC BY-SA 3.0、くろふね/CC BY 4.0)


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