静岡県が公開している「令和8年度クマ出没情報」によると、県内のツキノワグマの目撃件数は9月24日時点で98件です。前年度の同じ時期は69件だったので、今年は約1.4倍となっています。
昨年度は、これから迎える10月と11月に目撃が多くなりました。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の年間200件のうち、10月と11月の2か月だけで81件。年間の約4割がこの2か月に集中していました。10月から11月は、県内各地で紅葉の見頃を迎える時期でもあります。
この記事では、静岡県と各市町の公式ページに掲載されている目撃情報をもとに、どこで何件出ているのか、山に入る前に何を準備すればいいのか、目撃したらどこへ連絡すればいいのかをまとめました。
令和8年度の目撃件数は9月24日時点で98件
静岡県のツキノワグマのページには、市町から寄せられた目撃情報が一覧のPDFとGoogleマップで公開されています。9月24日時点の一覧をもとに市町別に数えると、次のようになります。
| 市町 | 件数 |
|---|---|
| 富士宮市 | 24件 |
| 静岡市葵区 | 24件 |
| 裾野市 | 20件 |
| 川根本町 | 10件 |
| 浜松市浜名区 | 5件 |
| 小山町 | 5件 |
| 熱海市 | 3件 |
| 浜松市天竜区 | 2件 |
| 富士市 | 2件 |
| 静岡市清水区 | 2件 |
| 御殿場市 | 1件 |
県のページには、この一覧について「クマと断定できない情報も含まれています」と書かれています。また、令和8年度のマップでは、目撃情報の精度によって色分けされています。赤はクマと断定またはクマの可能性が高い目撃、グレーは暗がりや瞬間的な目撃など、ほかの動物との見間違いの可能性がある目撃です。
昨年度は10月38件・11月43件。秋に集中している
令和7年度の一覧(年間200件)を月ごとに数えると、秋への偏りがはっきり出ます。
| 月 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 4月 | 7件 | 8件 |
| 5月 | 4件 | 33件 |
| 6月 | 13件 | 19件 |
| 7月 | 21件 | 16件 |
| 8月 | 16件 | 12件 |
| 9月 | 8件 | 10件(24日まで) |
| 10月 | 38件 | — |
| 11月 | 43件 | — |
| 12月 | 30件 | — |
| 1月 | 11件 | — |
| 2月 | 4件 | — |
| 3月 | 5件 | — |
県のページは、クマの活動が活発になる時期について「繁殖期や親離れの時期(5月から7月)や冬眠前に餌を求めて活動が活発になる秋には、南アルプスや富士山の南側の地域などにも出没することがあります」と説明しています。
さらに「近年、低山でもクマの目撃情報があります。ハイキング等で身近な山に入る際にも、クマ鈴やラジオをつける等、クマに出会わない対策をお願いします」と、低山でも対策が必要だと呼びかけています。
多いのは梅ヶ島・富士宮・裾野の須山

静岡市葵区の24件のうち、13件が梅ヶ島です。ほかに有東木3件、中平3件、井川2件と続きます。梅ヶ島は10月下旬から紅葉が見頃を迎えるエリアです。
富士宮市は市の公式ページでも目撃情報の一覧を公開していて、内房・羽鮒・山宮・長貫などの地名が繰り返し出てきます。明星山の頂上展望台付近(7月10日)や、朝霧キャンプベース場そらいろ付近(6月8日)といった、人が集まる場所での目撃も記録されています。
川根本町は10件で、奥泉・梅地・下泉・小長井・上長尾などで目撃されています。町の公式ページは「令和8年9月に集落内の目撃情報が2件発生しており、活動の痕跡も確認されています。今まで人が襲われた事例はありませんが、念のため、『クマよけ鈴』や『クマよけスプレー』等の携帯をおすすめいたします」としています。寸又峡や大井川鐵道沿線を訪れる際にも、目撃情報を確認しておきたいところです。
裾野市は5月に市長を本部長とする対策本部を立ち上げた

裾野市の20件は、そのほとんどが5月20日から5月26日までの1週間に集中しています。十里木高原の駐車場付近、越前岳の登山道、アシタカツツジ原生群落の駐車場、富士裾野工業団地付近、大野路交差点付近、千福が丘中央公園付近と、生活圏に近い場所が並びます。
これを受けて裾野市は、2026年5月22日に市長を本部長とする対策本部を立ち上げました。市長のメッセージには「市民の生命・身体・財産を守るため、県、警察、猟友会など関係機関と緊密に連携しながら、クマによる被害の防止に取り組んでまいります」と書かれています。市の公式ページは「富士山および愛鷹山はクマの生息地です」とも明記しています。
熱海の岩戸山でも3件。伊豆でも目撃されている
令和8年度は、熱海市でも3件記録されています。7月5日に伊豆山の岩戸山山頂付近、9月9日に岩戸山ハイキングコース、9月18日に日金町で目撃されています。伊豆でも、令和7年度に熱海市で1件(12月31日・捕獲)、函南町で1件の記録があります。
令和8年度の人身被害は1件。捕獲は3件
県の一覧には、目撃のほかに備考欄があります。令和8年度に記録されているのは次のとおりです。
- 8月29日 浜松市天竜区春野町気田 — 人身被害あり(軽傷)
- 5月23日 浜松市浜名区引佐町狩宿 — 5月23日捕獲
- 6月7日 小山町小山 — 6月7日交通事故死確認
- 6月25日 小山町柳島 — 6月25日捕獲
- 9月16日 静岡市葵区中平 — 9月16日捕獲
令和7年度の200件では、人身被害の記載はありませんでした。令和8年度の一覧で人身被害が記録されているのは、この8月29日の1件です。
山に入る前の備え

静岡県の注意喚起チラシと公式ページに書かれている対策は、次の4つです。
- 山に入る時は、鈴やラジオ・笛を用意して自分の存在をアピールする
- 残飯、生ゴミなどは必ず持ち帰る
- 早朝や夕暮れはクマがよく動く時間帯。雨風の強い日や沢沿いは人間に気がつきにくいので注意する
- 春と秋の山菜はクマにとっても大事な食料であることを知る
家のまわりでの対策も県のページに書かれています。県は、柿などの取り残した果実や、収穫しない果樹を早めに処分するよう呼びかけています。生ゴミや収穫しない農作物、落下した果実も放置しないこと、山と接している藪を刈り払って見通しを良くすることも挙げられています。
クマそのものについて、県は「非常に警戒心が強い動物で私たちを恐れています。通常は人の気配を感じて見つからないように逃げていきますが、稀に小川の音や強い風により人の気配を感じ取ることができず、出会ってしまうことがあります」と説明しています。県が鈴やラジオなどで音を出すよう呼びかけているのは、このような遭遇を避けるためです。
出会ってしまったときは、距離で対応が変わる
県のページは、クマとの距離によって取るべき行動が違うとしています。
| 状況 | 県が示している対応 |
|---|---|
| 50m以上離れている | 落ち着いて音をたてず、反対側に逃げる |
| 距離が短い | 刺激しないように落ち着いて、背中をみせずに後ずさりする |
| 攻撃してきた | 窪地などに腹ばいになり、両手を首筋の後ろでしっかりと組み、両肘で顔を守る |
| 子グマを見た | 近くに親グマがいる可能性が高い。周囲に注意しながらできるだけ早く遠ざかる |
県は「後ろを向いて走って逃げると追いかけてくる習性があります」とも書いており、走って逃げないよう呼びかけています。
クマ撃退スプレーは2026年8月に国が推奨要件を示した
これまで国内にはクマ撃退スプレーの統一的な規格がなく、性能がさまざまな製品が流通していました。環境省は2026年8月に「クマ撃退スプレーの性能に係る推奨要件」を公表し、静岡県も自然保護課のページで紹介しています。主なポイントは次のとおりです。
| 項目 | 推奨要件 |
|---|---|
| 有効成分の濃度 | カプサイシン・関連カプサイシノイドの濃度(CRC濃度)1.0〜2.0%程度を目安。「%」で小数点第1位まで表示 |
| 噴射距離 | 7.5m程度以上 |
| 噴射時間 | 6秒程度以上 |
| 噴射パターン | 円錐状に広がる霧状(ミスト状)。棒状の液流タイプは非推奨 |
| 携行方法 | 腰や胸付近に身に着ける専用の携行用ケースを活用。リュックやサイドポケットに入れての持ち歩きは非推奨 |
| 安全装置 | 歩行中の振動や藪に触れた程度では外れず、使用時にはすぐ外せるセーフティクリップ等が付いていること |
あわせて、忌避を目的とした事前噴射は推奨されないとされています。虫よけのように事前に噴射するのではなく、近距離で遭遇したときの使用を想定したものです。また、環境省は、推奨要件を満たしていない製品の効果を一律に否定するものではないとも書いています。
目撃したら、まず市町に連絡する
県の注意喚起チラシには「クマを目撃したら、まずは市町に連絡してください」と書かれています。目撃が多い市町の窓口は次のとおりです。
| 市町 | 窓口 | 電話番号 |
|---|---|---|
| 浜松市(中央区・浜名区) | 浜松市役所林業振興課 | 053-457-2159 |
| 浜松市(天竜区・天竜地域) | 天竜森林事務所 | 053-922-0031 |
| 浜松市(春野地域) | 春野支所 | 053-983-0001 |
| 浜松市(佐久間地域) | 佐久間支所 | 053-966-0001 |
| 浜松市(水窪地域) | 水窪支所 | 053-982-0001 |
| 浜松市(龍山地域) | 龍山支所 | 053-966-2111 |
| 裾野市 | 農林政策課 林業政策基盤係 | 055-995-1823 |
| 川根本町 | 産業振興課 林業室 | 0547-56-2226 |
| 静岡県全体の問い合わせ | くらし・環境部環境局自然保護課 | 054-221-2719 |
浜松市は「クマを目撃した際は、最寄の市担当課もしくは警察までご連絡ください」、裾野市は「万が一クマを目撃された場合は、決して近づかず、速やかに市役所または警察へ通報をお願いします」としています。
なお富士宮市は、公式ページの冒頭で「富士宮市のクマ情報をかたった有害サイトがございます」と注意を呼びかけ、正しいURLを明示しています。検索結果から情報を確認するときは、URLが市や県の公式ドメインかどうかを確かめてください。
よくある質問
Q. 静岡県にクマは何頭いますか?
A. 県は令和6年度に、カメラトラップと空間明示型標識再捕獲法を使った個体数の推計調査を行い、その報告書を公開しています。ただし推計値は報告書の図に示されており、本文中に数字としては書かれていません。県のページでは、静岡県のツキノワグマは「静岡県レッドデータブックでは『絶滅のおそれのある地域個体群』に区分されています」と説明されています。
Q. 低山のハイキングでも対策は必要ですか?
A. 県は「近年、低山でもクマの目撃情報があります」として、身近な山でもクマ鈴やラジオをつけるよう呼びかけています。令和7年度には竜爪山の登山道(8月27日・静岡市葵区平山)でも目撃が記録されています(竜爪山の登山コースはこちら)。
Q. 最新の目撃情報はどこで見られますか?
A. 静岡県の自然保護課のページに、令和8年度のクマ出没マップ(Googleマップ)と目撃情報のPDFが掲載されていて、随時更新されています。富士宮市・裾野市・川根本町は市町の公式ページでも一覧を公開しています。
Q. 子どもに教える機会はありますか?
A. 県は令和8年度から、ツキノワグマの生態や対処を学ぶ出前講座を始めました。現在は小学校高学年向けのプログラムで、小学校への訪問のほか、野外活動を行う団体なども利用できます。詳細は県のページに掲載されています。
まとめ
- 令和8年度の県内の目撃件数は9月24日時点で98件。前年度の同じ4〜9月は69件で、今年は約1.4倍
- 市町別では富士宮市24件・静岡市葵区24件・裾野市20件・川根本町10件
- 令和7年度は年間200件のうち10月38件・11月43件。年間の約4割がこの2か月に集中した
- 裾野市は5月の連続出没を受けて、5月22日に市長を本部長とする対策本部を設置した
- 熱海市でも3件。岩戸山の山頂付近とハイキングコースが含まれる
- 令和8年度の人身被害は8月29日の浜松市天竜区春野町気田の1件(軽傷)。捕獲は3件
- 対策は鈴・ラジオ・笛で存在を知らせること、生ゴミを持ち帰ること、早朝と夕暮れ・沢沿いに注意すること
- 出会ったら走って逃げない。50m以上なら音を立てず反対側へ、近ければ背中を見せずに後ずさりする
- 環境省は2026年8月にクマ撃退スプレーの推奨要件を公表。噴射距離7.5m程度以上、噴射時間6秒程度以上、ミスト状が目安
- 目撃したらまず市町へ。県の問い合わせ先は自然保護課 054-221-2719
※この記事は、2026年9月時点で静岡県・浜松市・富士宮市・裾野市・川根本町の公式ホームページに掲載されている内容をもとに作成しています。目撃情報の件数は公表資料をもとに編集部で集計したもので、県は「クマと断定できない情報も含まれています」としています。件数や連絡先は変わることがあります。最新の情報は静岡県自然保護課およびお住まいの市町の公式ページでご確認ください。
ふるさと納税で静岡県の自治体を応援する
ふるさと納税サイト「ふるなび」では、静岡県内の自治体への寄附を受け付けています。寄附金の使い道は自治体ごとに定められており、返礼品の有無や内容も自治体によって異なります。申し込みの手順や控除の上限額は公式サイトでご確認ください。
※当サイトはバリューコマースのアフィリエイトプログラムに参加しています
写真:Wikimedia Commons(Alpsdake/CC BY-SA 3.0、kizitora/CC BY 3.0、Alpsdake/CC BY-SA 4.0、KKPCW/CC BY-SA 4.0)

コメント